syrup16g Tour 20th Anniversary "Live Hell-See” の、2023年6月1日に豊洲PITで開催されたライブに行ってきた。
恐らく私が人生で一番聞いたアルバム、『HELL-SEE』の発売20周年記念ツアーの初日。
ライブの後まっすぐ家に帰って、ビールを飲みながらこれを書いている。
よし!これからライブの感想をつづっていきますよ!という雰囲気を出しておきながら、いきなり私個人のことを話すんだけど、実はここ最近結構大きなトラブルに巻き込まれている。
どういうトラブルかっていうのは今は詳しく説明できないんだけど、とにかくそれの後処理をすることによる肉体的・精神的な疲労、トラブルを未然に防げなかった・早期発見できなかったことへのことに対する後悔、元凶となった相手への憎しみ、未来への不安、全ての対応が終わったと一息つく度に出てくる嫌な新事実……の数々で心がひしゃげてしまい、昨日・今日は躁状態と鬱状態を交互に繰り返していた(トラブルの詳細や対処法などもいつか書きたいと思って色々メモしているのだけれど、内容が内容なので投稿するとしてもはてな匿名ダイアリーあたりになるかも……)。ハイパー簡単に言うと、ウルトラ疲れ切っていた。
このライブはチケットが取れたときから観に行くのをすごく楽しみにしていたけれど、こんな嫌なことの真っ最中にライブに参加したら今後syrupの曲をいままでと同じ気持ちで聴けなくなってしまうんじゃないかとか、トラブルを未然に防げなかった私が今時間と金をかけて楽しんでいいのか?みたいなことを考えてしまい、ライブに行くかどうか当日の朝まで悩んだ。
行く、行かない、を何度も繰り返して、でもでもやっぱりどうしても行きたいと思って家を出て、そしたら昼間にまたトラブルに関する連絡があって本当にくたくたになってしまって、もう家に帰って寝ようかな、とも思ったんだけれど、いやでもやっぱり10代の頃から何度も何度も聞いてきたアルバムの曲をどうしても生で聴いてみたい!と思ってなんとか電車を乗り継いで会場へ向かった。
やっとの思いでライブ会場に到着。とりあえず目的地にたどり着けたことに安心して周りを見渡すと、会場付近に居るのは「なんかまさにsyrup16gを聴いてそうな人」ばっかりだった。
黒い服装、マスクをしていてもわかる無表情、ストレートネック。「ここにいる人たちの全員、私とおんなじように自罰的な考え方するんだろうな〜」とめちゃくちゃ失礼なことを思った。そしたらさっきまでの憂鬱が嘘のように元気になった。服装が私とほとんど同じ人も数人見つけたあたりでアットホーム感を感じ安心して、愉快な気持ちになってくる。すごいありふれた表現を使うと「ここにいる人は全員仲間だ!私は孤独じゃない!」と思った。それにすごく勇気づけられた。
気分が上向いたところで、物販の列に並ぶ。暇なので、後ろの人の会話を盗み聞いていると、離婚がどう、転職がどう、という話をしている。「やっぱりsyrup16gが好きな人って、昭和的価値観を持つ人が言うような『普通の幸せ』にストレートにアクセスできてる人が少ねぇんだろうな……」などと、盗み聞きしておきながら誠に超マジで失礼なことを思う。
さらに盗み聞いていると「syrupがあるから宗教にハマらないって人、絶対いるよね」「五十嵐(ボーカル・ギターの五十嵐隆さん)が教祖みたいな存在になっててね」という話もしていて、それについては心の中で強く頷いた。「真面目に」「指示された何かを信じて」生きていれば死後天国に行けるんだと説く人よりも、現世でビデオ屋さんに行き棚の前で2時間も立ち尽くしてるのに疲れすぎて借りる物が決められないよ〜とかいう病んだ人あるあるの歌を作れる人の方が自分のことを深くわかってくれそうだし信用できる。
その後、無事グッズが購入できたので会場近くをフラフラ散歩。
適当に時間を潰して、ライブ会場に戻る。
……ほんでここから肝心のライブの感想なんですが、本当に楽しくて気持ちよくって気がついたら終わっていたので、その中で覚えていることを箇条書きで書きます。
- 18時会場、整理番号はB-840番台。
- 840でも大きい数字なのに、Bってことは相当後ろの方なのかなぁ……と思っていたが、逆に後ろの方でゆったり見たい人が多かったようで上手側10列目くらいに陣取れた。
- 19時10分開演
- ライブ本編は「HELL-SEE」をアルバム順で演奏
- セットリストの予想はなんとなくできていたけれども(だってそりゃアルバムの発売20周年記念ツアー……)、やっぱり「HELL-SEE」の1曲目である「イエロウ」のイントロを聞いた途端にじわっと涙が出てくる。
- 10代の頃から何度何度も繰り返し聞いたアルバムだったので、最初はイントロを聞いただけで頭の五十嵐隆が勝手に歌い始めてしまったり、歌詞が勝手に頭に浮かんで邪魔だった
- でもそれも3曲目くらいまでで、それ以降はちゃんと目の前のライブに集中できた
- 「I'm劣性」や「Everseen」を生で聞いて踊れる日が来るとは
- 「I'm劣性」のイントロを聞いたときに、「そういえば『30代いくまで生きてんのか俺』って歌ってた人が50代になったんだなぁ……(この日がちょうど、五十嵐隆さんの50歳の誕生日だった)としみじみしていたら、本人もそう言い換えて歌っていたので笑った
- 「正常」の陰鬱で鬼気迫る感じ大好き〜
- 「月になって」のベース大好き〜
- 照明の演出が本当に素晴らしかった〜!どれも曲の雰囲気を最大限まで上げてくれて最高だった。特に「シーツ」は青く染まったステージが曲の美しさと相まって最高に気持ち良くなってしまった。
- ちょっと脳に気持ち良すぎる物質が分泌されすぎていた。あと5分同じ状態が続いてたら、良くない状態になっていたかもと思うくらいには気持ちがよかった。またやりたい。
- ライブが始まる前は、「曲を通して昔の出来事を思い出してボロボロ泣いちゃうかもな」と思っていたけれど、意外にも泣かなかった。とにかく目の前の光景を見逃したくない、聞き逃したくない、という気持ちと、楽しさ気持ち良さでいっぱいで、目の前のライブ以外のことは何も考えられなかった
- アンコールは最新アルバム「Les Misé blue」から3曲
- 「うつして」が本当に美しい曲過ぎて、聞きながらぽーっとなってしてしまった。口半開きでうっとりしながら聴いていた。
- ダブルアンコールは「落堕」「真空」でノリノリになったあと「Reborn」。50歳の誕生日を迎えた人が歌うには歌詞がマッチしすぎているだろう。感動してポロポロ泣いてしまった。
21時終演。急な現実に呆然とする。
会場を出て豊洲駅までわけもわからんまま歩きながら、私はさっき生演奏で『HELL-SEE』を聞いてきたんだ、と思ったら信じられない気持ちになった。
『HELL-SEE』は私が最初に手にしたsyrup16gのCDで、それはsyrup16gが活動休止を発表する直前だった。
このアルバムを一度聞いただけでsyrup16gに一気にハマっただとか、めちゃくちゃビビビと来る曲があったとか、そういう出会いではなかった。
むしろ音が小さくって聞き取りにくいし、同じような曲が何個も入っているなというネガティブな印象だった。なのに、なんだか気になる。聴いているとすごく安心したり、逆に何も手にとつかないくらい心がざわざわしたりする。このアルバムのことが気になる理由が自分でも知りたくて何度も再生しているうちに、いつの間にか私にとって『HELL-SEE』は、「特に聞きたい曲が無いときに再生する、生活に根付いたアルバム」になっていた。
syrup16gのことがだんだんと気になりだした頃にはもう活動を休止していて、かと思いきや五十嵐隆がソロプロジェクトを始めるらしいという噂が飛び交い、とりあえず過去のアルバムをTSUTAYAで全部借りてiPodに入れて、五十嵐隆が表紙の雑誌『MUSICA』を買い、犬が吠える、って何、と思い、過去の曲を聞き、気がついたら犬が吠えるもなかったことになっていたあたりで本気でsyrup16gを大好きになってしまい、過去のアルバムを何度も何度も再生しながら「こんなに好きな曲をもうきっと生で聞けることのないんだ、私はいっつもタイミングが遅いんだ……」という、もう本当に何を言っているんだということで泣いていたりした。多感で考えが飛躍しすぎで超がつくほど根暗だった。
私にとってsyrup16gは、観に行けるバンドじゃなくって、しんどい夜に泣きながら布団の中で過去のアルバムを聞く音楽だった。でもそんなsyrup16gが活動を再開してくれて、新しい曲が聞けて、新しいアルバムが手に入って、そして観に行って会場で泣けるバンドになっててうれしい。そして、syrup16gを好きになるきっかけだったアルバムのツアー初日に参加できて本当に本当に本当にうれしい。
20代前半の頃、知り合いの音楽好きが「俺の大好きなカート・コバーンは、27歳にして自分で死を選んだ」という話をさも自分の武勇伝みたいに頻繁に持ち出してくるのが最高にダセえなと思っていた。そして「私の大好きな五十嵐隆は、生きてるのがしんどい辛いって歌いながらもまだちゃんと生きてるぞ、そっちの方がかっこよくないか?」とも思っていた。どんなに憂鬱な日も自分の不健康さが心配になる日も、「30代いくまで生きてんのか俺」と歌っていた五十嵐隆が30代を過ぎても生きているなら、まぁ私もなんだかんだで30代まで生きてるんだろうなぁと思ったし、そんな五十嵐隆が今日50歳になったなら、私も少なくとも50歳までは生きてるんだろうなぁ。なんて10代の頃みたいなことを思う。
明日からもまた頑張る。