2024/10/28(月)
朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』を読んだ。
主人公は結合双生児。
2人は頭も胸も腹も全てがくっついているが脳はそれぞれ独立していて、互いの好みが微妙に異なったり、同じものを見て別のことを考えたりしている。ただし同じ身体を共有しているから、相手の考えていることがなんとなく読み取れたり、伝えようと思えば声を出さなくても相手に内なる声で話しかけられたりする。1つの身体に2人分の精神が宿っているだけで(まぁそこが物語の要ではあるのだけれど)、それ以外は普通の姉妹の話みたいだ。
この話を読んでいて好きだなと思ったのは、物語の語り手がシームレスにするすると変わっていくところ。夢中で読んでいたのに、急にふと「今『わたし』と言っているのはどっちだろう」と思ったりする瞬間があって不思議な感じがした。
ものすごい設定の物語だけれど、この本を読みながら私は「これに出てくる『自分の身体なのに自分だけの身体じゃない感覚』って、私が読書に没頭しているときに味わうあのふわふわした感覚とすごくよく似ているなぁ」なんて、かなり日常的なことを考えていた。
物語にのめり込んで主人公の心の声に共感していると、だんだん文字を追うごとに自分の身体に宿っているのは自分の心だけではない感じがしてくることがある。
自分の身体に物語の主人公の脳が入り込んでくる感覚があるときもあるし(文字にされたことがそのまま私の思考として処理されるようになるというか)、逆に私の意識が主人公の体に入り込んで、ストーリー上を輸送してもらっている気になるときもある。
この本を読んでいるときも語り部が曖昧になった瞬間なんかに、私が3人目の精神として存在している気持ちになるときがあって、不安になったり安心したりした。不思議だったな。
2024/10/29(火)
夏の間は中途半端に余っている野菜を何でも入れてつくる、品目数多めのサラダにハマっていたけれど、今は余っている野菜を何でも入れたスープを作るのにハマっている。
具は、スーパーで安く変える旬の野菜……今の時季は根菜やきのこ、あとはサラダ用に常備している(そして、常備しようと心がけすぎるあまり買いすぎてしまう)レタスやトマトなんかが多い。
味付けはみそ汁か和風スープ、あとは最近初めて作って、そのおいしさにびっくりした豆乳味噌スープなど。
豆乳味噌スープは、そういうものがあるということは知っていたものの「茶色い味噌汁に白い豆乳を入れるのって、なんか気持ち悪い……きっと合わないよ」と思って作ったことがなかった。しかしある日、なんとなく濃い目に味をつけた味噌汁に豆乳を入れてみたら、これがしょっぱクリーミーでおいしかった。魚介っぽさの薄いクラムチャウダーみたいな味がした。これぞ私の求めていた味って感じ。感動。よくよく考えてみたら、豆乳も味噌も大豆でできているんだから合わないわけがないよな。この日以降、味噌汁を作るときはやや多めに作って、次の日に余った汁に豆乳を足して食べるのがプチブームになっている。
そして今日はきのこをたっぷり入れた和風スープを作った。うまいうまい。たっくさん食べたので、明日はきっと顔がむくむくにむくんでいる。
2024/10/30(水)
夜、天気予報を見ていたら、土曜日は雨だという。
今週の土曜日は、ずっと楽しみにしていたsyrup16gの野音公演。
何を着ていけばいいんだ。考えを巡らせてみたけれど全くわからず、だんだん悩むことすら面倒になってきたので、「晴れてくれ〜」と強く思うことで今日のシンキングタイムは終了。
夜は夫が会社の勉強会で遅くなるとのことだったので、娘と一緒に回転寿司を食べに行った。
2024/10/31(木)
ツイッターをのぞくと、アイドルたちがこぞって仮装をした自撮り写真を載せていた。そういや今日はハロウィンか。
2024/11/01(金)
どうやらやはり明日は雨らしい。
アルバイト先の人にレインコートをドライヤーで温めると撥水機能が復活すると聞いて、風呂上がりに自分の髪より丁寧に温風を当てる。
2024/11/02(土)
午前中は娘と一緒に出かける。たまに行くスーパーに向かうのにいつもと違う道を通ってみたら、見知らぬ公園を見つけた。こりゃ行ってみなきゃいけませんな、ということで、スーパーでパンを買い、公園に戻って娘と一緒に食べる。ウチら毎週ピクニックしてんね。その後は知らない遊具にはしゃぐ娘を見ながらぼーっとしたり、小走りしたりした。
小雨が降ってきたので急いで帰宅。娘に牛乳の入ったコップを渡して、2人でテレビを眺める。そのうち出かけていた夫が帰ってきたので、交代するように今度は私が出かける。今日はsyrup16gの日比谷野外大音楽堂公演、「遅死11.02」へ行く。
電車の中で5分ごとに天気予報を確認するが、何度見ても、また違うサイトを覗いてみても、やっぱりライブの開始時間に雨が一番強まるみたい。ここまできたらもうしょうがないので、しっかり雨の野音を楽しもうと思う。
気合が入りまくっていたので、会場には物販開始30分前の14時半に到着。だいぶ早めに着いた気でいたけれど、物販列はすでに長蛇の列。こんなとき、普段なら読書して待つのだが、今日は濡れると思ったので文庫本をカバンに入れてこなかった。仕方ないので30分間ずっとスマホの画面を見て列が進むのを待つ。
グッズをゲット後、サーッと雨が強まってきたので、会場横のタリーズに避難。きっとグッズを買った人のほとんどがこの店に流れ込んでくるだろうと思って、テイクアウト用のコップにコーヒーを入れてもらう。椅子に座り、熱いコーヒーの湯気に当たってぼーっとしていたら、外からリハーサルの音漏れが聞こえてくることに気づいて、急いでコップを取り再び外に出る。
外には私と同じように音漏れを聞きに出てきた人がたくさんいた。演奏に聞き入っているのか、みんな遠い目をしている。集団催眠……と思いながら耳を澄ます。多分私もすぐに同じ目をしていたと思う。
しっとり濡れた肌を風が撫でてくる。まあまあ寒い。吐く息がかすかに白く、コーヒーを持つ手が震える。開場前にあまり体力を削っておきたくないので店内に入ろうかとは思うのだが、次の曲だけ聞いたら、あと1曲だけ聞いたら、と思って結局リハーサルで演奏された全ての曲を聞いてしまった。5曲くらいやったんじゃないか。太っ腹すぎる。震えながら聴く正常が良すぎた。
その後タリーズに戻ってまたもやコーヒーを購入(カフェイン取りすぎ)。再び、ぼーっ。同じ施設の上の階に図書室があることを知ったので行ってみる。空いていてとても快適だった。開場の時間まで、多肉植物の本を読む。
開演20分前に、上下レインコートに着替え、首の裏と腹にカイロを貼り、野音の会場内に移動。大粒の雨がザーザー降っている。今日に限って紙チケットにしてしまったので、濡れてしわしわになったチケットを持ちながら、必死で自分の席を探す。階段を降りていたら水溜まりにハマって笑ってしまった。雨だ!
やっと席を見つけたので歩いていくと、隣の人もその隣の人も、レインコートを着たまま、ひざのうえに固く握った拳を置いて、思い詰めたように前を見ている。ライブで演奏中全く動かない客のことを「地蔵」なんて行ったりするが、今私の眼の前にいる人たちの方がはるかにお地蔵さんだった。
開演。強風でスモークが流れる。めっちゃ大声で歌う五十嵐隆氏。歯ぁ欠けちゃうよって思うくらい奥歯を噛み締めながらギターを弾く五十嵐隆氏。最初っから全力、もしくはやけくそな感じの歌い方だった。多分いつ中止を言い渡されても観客に「悔い無し!」って思ってもらえるように、後のことは考えずに最初から出し惜しみなくやってくれているんだなと思った。
雨で眼の前が霞んで全てが幻みたいに見える。隣の人に水が飛ばないように、控えめに踊る。酒は飲んでいないのに頭がぼや〜んとして気持ちいい。
もう、ただただ夢中。レインコート越しに大粒の雨を感じながら大音量で好きな曲を聴くっていうのは非日常的な体験すぎて、たまにふと「何やってるんだろう」と思ってしまう。面白すぎてずっと笑っていた。
それにしても、フラッシュのように高速で点滅する照明の演出って、浴びると本当に気持ちよくなっちゃいますね。「落堕」で赤と緑に点滅するライトを浴びて「どうにでもしてくれ〜!」という感じになってしまった。あの感覚になるたびに、自分は絶対にパチンコにハマる素質があるから手を出してはいけないと思ってしまう。
気がついたら終演。
明日また熱出そう……いや、出したら娘の面倒が見れなくなってまずい……子どもがいると熱も気軽に出せないのか……なんてヘロヘロになった脳で脚だけサカサカと動かして駅まで歩く。駅の入り口でレインコートを拭ぐ。蛍光灯に照らされた瞬間、さっきまで野音で大雨に打たれながらsyrupを聴いていたんだということに対する現実味がなくなり、数十分前の自分と今の自分が同じ座標の延長線上にいる感じがしなくて、ホームにぼーっと立ち尽くしてしまう。
これからどうしたらいいかわからず、それでもとりあえず電車には乗ったほうがいい、と思ってちょうどホームに滑り込んできた電車に乗り、濡れたレインコートを腕にかけながら窓の外を見ていた。
あんまり頭が働かず、最寄りでもない駅で降りて、結構恐ろしい量のお酒を朝まで飲んで帰宅。
2024/11/03(日)
深酒朝帰りコンボを決めてしまったので、14時くらいまで寝こけていた。その間、娘は夫が見ていてくれていた。
起きてうどん食べて回復。娘と一緒に図書館へ行き、帰りにスーパーに寄って帰宅。頭の中でずっとsyrup16gの「遊体離脱」が流れていた。昨日のライブでは演奏していなかったはずなのになんでなんだろう。
娘が寝る前に「ねぇ、あたちのふく、げっぷなんだよ」と言っていたので、「げっぷ?げっぷではないよ」と答えると「ううん、みんな言ってたよ。あたちのふくは、げっぷなんだって!」と言う。
え、もしかして服がゲップのように臭いって意味?娘、いじめられてる?とグルグル考えていたら、娘が「あの〜、ほら!あのばあばにもらったやつ!ピンクの!」と言っていて、そこでやっと娘が言っているのが「GAPの服」だということに気づいて笑った。
あと「餅って英語でまんじゅうなんだよ〜」って言ってた。そうかもね〜〜ん!ラブ!